クリスマス・ストーリー

アルノー・デプレシャン、2008。ドラマにおける最重要課題である家族と愛について、これほどまでに豊潤な表現力を持って語れる映像作家がいるんだなあと感動したね。この映画に出てくる兄弟は、幼くして死んだジョセフという人物の代わりにもなっていなくて、故に他の3人の兄弟はルサンチマンを持つ存在として描かれる。3人の兄弟の配偶者も同じである。しかしドヌーブの死の前兆によってそれぞれのルサンチマンはそれぞれの形で解放されていく。物語は聖なる死の対象がジョセフからドヌーブへ移行するときに日常はドラスティックな変化を生む。そこがこの映画の要所であり、そこを掴んでおくとこの複雑なシナリオはかなり明瞭になると思う。この映画の素晴らしいところはまず日常をスリリングに描く技巧。これはトリュフォーが得意とするものだけれど、デプレシャンはすでにトリュフォーの真似事ではなく自分のものにしている。エリック・ゴーティエの素晴らしい手持ちカメラの緊張は、ジャンプカット的な性急なカッティングによってスリルを生み、そこに音楽が絡みつく瞬間はとてもファンタスティック。役者はデプレシャン組が固める中、アンヌ・コンシニが重要な役回りを演じて見せた。女の弱さと女ならではの強固な意志を併せ持ったスリムな体とお堅い表情はいままでのデプレシャン映画にはいなかった存在だった。でも一番良かったのはキアラ・マストロヤンニだね。何せエロい。このエロさが、この映画を愛の映画、愛欲の映画としても成り立たせているんだなあ。しかしこの映画は群像劇で、台詞をちゃんと読んでいないと細かいところが分からない。それでデプレシャンお得意の、いきなりカメラに向かって独白が前作より多いし、手紙とか、書物とかまで出てくるから多分僕は半分ぐらいしか理解していないと思う。でも150分、時間を忘れて釘付けになったのは久しぶりだなあ。もの凄く疲れた。しかしデプレシャンは寡作なんだけれど、作れば名作ばかりだね。本当に現代映画作家の中でもトップクラスの作家だと思うなあ。