チーズとうじ虫

加藤治代、2005。ガンの母を撮影する娘のホームビデオ。日記のようなエッセイ集のような感じで区切っていくのは、退屈さを紛らわすのに役立ったと思う。監督は映画の主演女優である母の魅力を存分に引き出していて、その表情や言動はどこか見る者を虜にする。死してもなおチャーミングな表情であり続けた女優魂にはひれ伏すしかない。あと母の死へと至るシーケンスは素晴らしいものだった。この家庭ではいつでもテレビが垂れ流しになっているんだけど、新調したテレビがつなぐ母の死。それ以降映画は唐突に停滞するんだけど、それは当然母の不在によるもの。それを端的に表すモチーフがテレビだった。以降母はテレビには度々登場するが、現実世界には一度も登場することはない。そしてラストシーンで映画は停滞を乗り越えて歩を進めることになる。スタイリッシュな映画ではなかったけれど、老若男女植物生物入り乱れて興味深い映画だった。95点。