ライク・サムワン・イン・ラブ

アッバス・キアロスタミ、2012。ガラス越しの人物やカーテン越しの人物。ガラスは店のガラスだったりテレビの画面だったり自動車のガラスだったりする。会話も電話越しやインターホン越しで、留守番電話が典型だけど、ほとんどの会話は一方的で双方向性が失われている。オープニングシーンのように話し手や聞き手が画面にいなかったりするのは、あからさまに双方向性を失わせている。タクシーの運転手と客や、デリヘル嬢と家主という奇妙な箱モノも、空間と関係性のいびつさを表していると思う。この映画はそんな日本の現代都市を徹底的にストリクトな切り口で描いている。リアリスティックな寓話という感じで映画好きがうーんと唸りそうな印象がした。ただ画としては面白みに欠け、奥野匡の演技はひどいものだった。でもこの演技すら人物の嘘くささと重ね合わせれば名演なのかもしれない。あとは録音。これもひどかった。ナレーターのような音響で声が聞こえたり、ガヤの音を使い回しなのかループさせていたりと、これはさすがに確信犯ではないと思う。良い映画だとは思うけれど、テーマ的に人物を魅力的に描いたり出来ないわけで、こちらは魅力的に描いてもらいたいわけで、なんだかカッコ悪い映画だなと思った。せめて高梨臨に恋する映画にはしてもらいたかったなあ。90点。