東京おにぎり娘

田中重雄、1961。圧倒的な脚本力に驚かされた。テキパキと進行する通俗ドラマの軽妙さ。特にシーンの切り替えが巧妙すぎる。そして素晴らしき演者と素晴らしき演出。特に東京ど真ん中ロケーション撮影の多さはうれしかった。普段はこの映画いつ終わるんだとばかり気にしてしまうところ、この映画は終わってほしくない、このまま浸っていたいと思わせる心地よさがあった。でも悲しいことに若尾文子が川口浩にフラレてしまう。悲しくて悲しくてやるせなかった。若尾文子と川口浩がうまくいく映画、例えば『最高殊勲夫人』あたりを手元において見ないと本当に悲しすぎて涙に暮れる日々を過ごすことになる。一応ハッピーエンド気味のエンディングが用意されてはいるものの、僕には何の慰めにもならなった。演者が良すぎるこの映画の中でひときわ変態的な怪演を見せていたのが伊藤雄之助。役柄としては、若尾文子に近寄る偉そうな社長という感じなんだけれど、その嫌な感じを出しつつ洒脱な変人へと落としこむ怪演を見せていて、登場するだけで空気が軽薄になるのがたまらなく良かった。95点。