マーサ、あるいはマーシー・メイ

ショーン・ダーキン、2011。不安なものや不安定なものを、地味にジワジワとあぶり出していく映画。被写界深度の異常なる浅さ。人物を中央に配置しないフレーミング。カットバックではその身体の向きを通常の逆方向にしたりしている。暗闇が多いのも当然不安を増幅させる。マンソン風のコミューンからは車で3時間離れていると、台詞では説明しているけど、まるで森を隔てた向こう側にコミューンがあるように感じられる。明らかにおかしなコミューンと、おかしくないはずの別荘が、同じ調子で描かれている。さらにシーン始まりのエリザベス・オルセンが、コミューンのオルセンなのか、別荘のオルセンなのか、見ていて戸惑うような仕掛けも効果的だった。その二つの世界のどちら側にも適応せずに存在するエリザベス・オルセンは、実体こそ、そのどちらかに存在するけど、まるでその間にある森のなかを彷徨っているように見えた。地理的に言えばもう一つのオプションとして湖があるんだけど、美しい湖なんてまったく描かれない。でもエリザベス・オルセンは湖で泳ぐ。オルセンは地上では森にいて、湖では水面にいる。常に何かしらの境界線上にいることを示唆しながら、境界線を取っ払うような作り方をしているのが興味深い。地味すぎるけど後からジワジワとくる映画だった。95点。