祇園囃子

溝口健二、1953。情感たっぷりに描くことなく、美的に凝りまくった画によって、ものすごくシャープな映画になっている。宮川一夫は動いて良し止まって良しで素晴らしい。カットの入りの画の美しさ、そして人物の配置にはうっとりした。画のなかに切り取られた画があって、さらに奥行きがあるのが素晴らしい。溝口にしては洒落た映画で、得意の長回しもほとんどない。溝口の多才さというか、こんなまとまりの良い、ある意味ポップな佳作も作るんだと意外に思った。しかし何と言ってもこの映画は若尾文子が素晴らしい。新しい世代の女性を象徴しつつ、それを立ち上がる女性という感じでなく、キュートさを持って描いている。それを若尾文子は見事に演じている。はまり役とはこういうものだと思った。この映画は演者が薄めに描かれていて、特に男優陣は愚かさと可笑しさをサクッと描いた感じで、女優陣も浪花千栄子ですらあまり怖くない。木暮実千代と若尾文子は、時の流れにある程度あらがいながも、結局のところ時の流れに身を任せるしかない。この映画は若尾文子の映画だと思うけど、テイストを決定づけているのは木暮実千代だと思った。おっとりしていても実は頑固者。優しさとダメさ。木暮実千代ってマルチロールだし映画のなかに当たり前のようにいることができるから素敵。95点。