舞踏会の手帖

ジュリアン・デュヴィヴィエ、1937。誰もが一度は思い描くようなシンプルなあらすじを、映画のマジックを使いながらダイナミックに描いている。舞踏会デビューのときに愛の告白をしてきた男たちを、20年ぶりに訪ね歩くマリー・ベル。ほとんどの男は悲しい方向に傾いており、その人間模様が描かれる。バーあり修道院あり山小屋あり美容室ありと、オムニバス形式を最大限に利用したロケーションの移行にはダイナミズムがあった。会話劇よりもアクションによって人物を描こうとしており、それもダイナミズムを生んでいる。かなり大胆な撮影も見られ、町長とダメ息子の馬小屋でのシーンでは、イマジナリーラインをまたいだショットの切り返しによって、ふたりの相容れない関係性が強調されていた。次の闇医者の家のシーンは、悲しき男のクライマックスともいえるシーンで、カメラはその男や家の状況を、過度に傾けて撮影し続けることで強調している。窓越しに見える物体から延々と発せられるノイズも同様に、シーンの状況を煽っていた。終盤になって、今度は20年後の彼らではなく、20年前のマリー・ベルの記憶が実際とは圧倒的にズレていることが、舞踏会場によって提示されるのはおもしろかった。そしてラスト、マリー・ベルはその記憶の舞踏会へと、ひとりの男を送り出す。マリー・ベルの目立たない存在感が素晴らしい。100点。