ジャック・ベッケル、1960。娯楽作品としては、かなりストイックな脱獄映画になっている。コンクリート破壊映画といってもいいくらい。サスペンスの要素はあまりなく、鏡を簡単に放置するし、点呼の時間ギリギリに穴から帰ってくるし、余裕でターゲットのコンクリートまでたどり着いてしまったりする。そこからはひたすら肉体労働がつづく。様々な小細工が施された小道具、そして時間を割いて描写される轟音を伴う肉体労働。労働者の記録映画を見ているような錯覚に陥る。コンクリートをガツンガツンと砕く手を長回しする意味は、とても穴までの険しい道のりをあらわしているようには見えない。そこにサスペンスは生まれないし、険しい道のりにしては労働者たちが頼もしすぎるからだ。そこにあるのはただ鳴り響く音とその響きだけである。そんな労働者の破壊活動も、脱獄によって終わるのかと思いきや、謎の主人公によって穴はふさがれてしまう。最後のどんでん返しとその演出は、娯楽作品としては、素晴らしいものがあった。鏡に映る看守たちのインパクトは絶大だった。パンツいっちょの4人組と、謎の主人公の対比もよかった。しかし、そのどんでん返しには、労働者がコンクリートを破壊するような圧倒的な説得力がない。わかりやすくもあり、わかりにくくもある謎を作り出し、それに頼る形で物語を終わらせている。語られないストーリー、あるいはプロットの断片は、見る者に委ねられることになるが、そこに興味はわかなかった。95点。