ウンベルトD

ヴィットリオ・デ・シーカ、1951。映画史においては、この作品の不評がネオレアリズモの終焉を決定づけたとされることが多い。実際に、ネオレアリズモの特徴であるロケーション撮影や演技の即興性を生かした柔軟なフレーミングはこの映画では見られない。ローポジションを中心として、厳格にフレーミングされたショットが様式美にもとづきカットされる。また、その後のデ・シーカ作品に通じる感傷的な演出もネオレアリズモらしくない。当然これは単純な比較でありどちらがよいというものではない。この映画は元役人の年金生活者ウンベルトDのプライドと孤立を描いている。彼はプライドが高いがゆえに孤立を深めてゆく。ほとんどのシーンで着ている黒いスーツとハット、それにローポジション、ハイアングルのショットによってプライドと孤立が強調される。演技よりも映像によって、人を寄せつけない厳しさが彼には与えられている。ただ、この映画はラブストーリーのような展開を見せる。飼い犬への一貫した愛情が成就するのだ。金策に奔走する彼にとって、犬はお荷物だったりする。はなればなれになれば執拗に追いかける。別れそうになってはくっつく。別れは彼の死を暗示する。そして、彼は犬との心中に失敗してふられる。はじめて犬の側から拒絶されたとき、犬から死刑宣告を受けたとき、彼は本当の愛に気づき求愛行動に出る。そこにはプライドなど存在しない。恋は成就し伴侶を得た彼は孤立していない。恋愛によって彼は変化し、生きる意味をようやく見つけたのだ。そのようにして貧困独居老人のほろ苦い恋物語が語られている。90点。