不思議惑星キン・ザ・ザ

ゲオルギー・ダネリア、1986。この映画のはじまりはとても現実的である。マカロニを買いにゆくおじさんに、バイオリン男が、裸足の宇宙人がいるんだけど、てな具合に話しかける。そしてラストでそれは反復され、素晴らしいアクションと感動を生み出す。映画は主に4人の登場人物たちを中心に語られる。地球人2人と宇宙人2人である。バイオリン男は文句ばかりで邪魔してばかりだし、主演のおじさんはスタア映画の役割を与えられない。他2人は裏切ってばかりである。バディムービー的な要素はあるにはあるが、それを本筋として語ろうとはしない。アドベンチャーというジャンルにもあまり興味がないようである。地球に帰りたいという動機づけははっきりと提示されるのだが、この映画にはロードムービーのようなあてどなさが漂う。そのなかでマッチを用いて資本主義をシニカルに描いたりするのだが、決定的にキャッチーなのが上下関係の挨拶である。それは、つげ義春の「長八の宿」において、じいさんが富士山をあらわすのに使うジェスチャーにとてもよく似ている。それらは無関係だと思われるのだが、どちらも独特のシュールな世界観を持っていることだけは共通している。このキャッチーな挨拶によって、映画は大衆性を得るにいたる。SF映画を作って、挨拶を表現して脚光を浴びるというこのバカバカしさは、この映画の魅力を物語っている。錆びついた金属とローテクばかりの造形は、この映画の美術を芸術にまで引き上げている。SFやアドベンチャーやコメディなど、映画を転がす形式に頼らず独歩することで、この映画は独特の世界を生み出している。95点。