ローラ

ジャック・ドゥミ、1961。長編デビュー作。ラウール・クタールによる自然光を生かした手持ち撮影が、当然ながら素晴らしい。そこにドゥミの脚本が乗っかり、ルグランが聴こえ、中心に美しきアヌーク・エーメがいるだけで、ひどい映画にならないことは保証される。撮影と脚本と女優が、演出により相乗効果を生んでいるとは思えないが、それぞれに高いパフォーマンスを発揮している。人と人が不思議な交錯を見せる脚本はとてもエレガントである。アヌーク・エーメがとにかく素晴らしい。彼女が働くキャバレーのシーンも見せ場である。この物語は、主人公のダメ男が初恋の女アヌーク・エーメに出会うことで均衡が崩れ、アヌーク・エーメが初恋の男と出会うことで均衡が戻る。ダメ男にとっては災難のような物語なのだが、そのプロットはとてもおもしろい。関係ある人ない人が交錯していくなかで、アヌーク・エーメの初恋の男は姿をあらわさない。人と人の交錯は円を描くように描かれ、その円の外に初恋の男という円があるような作りになっている。その円の中心はアヌーク・エーメである。物語の均衡が崩れると、みながナントから離れるように仕向けられる。最後に残っていたアヌーク・エーメを初恋の男が捕まえる。ダメ男とアヌーク・エーメが会話するシーンの、真っ白なアヌーク・エーメと真っ黒なダメ男の衣装の対比は状況を的確に物語っている。そして真っ白な車に乗る初恋の男。車はおそらくエル・ドラドであり、キャバレーの名もまたエル・ドラドである。ラストでのアヌーク・エーメの主観ショットによる、ダメ男との決定的な交錯、当然のすれ違いには、ただならぬ虚脱感がある。95点。