ザ・ウォード/監禁病棟

ジョン・カーペンター、2010。その王道的なスタイルが、サスペンスのみならずドラマの語りをも強固なものにしている。とりわけ、的確な編集によるスマートな映像作劇は見ものだ。少女たちのキャラクターを立たせる迅速さも演出力のたまものだろう。ニュービーツの「ラン・ベイビー・ラン」で踊る少女たちと、監禁病棟から脱走する少女たち。その対照的な場面における撮影と編集の基本スタイルの類似は、この映画が撮影技法に対して確固たる信念を持っている証左といえる。物語の語り口にも王道的なスタイルははっきりと見て取れる。中盤まで、語り口はかなり制限され、アンバー・ハードの外には出ないため、ミステリーが増幅する。しかし、徐々に全知の語り口が見えてくると、今度はサスペンスが強調される。特に制限された語り口が効果的になっているのは、アンバー・ハード自体が謎だらけだからだ。映画は彼女に寄り添うため、まったくといっていいほど状況が説明されることはないし、自身のことすらわからない。さらには主観ショットやフラッシュバックの効果的な使い方も、制限された語り口を強化している。物語は、実験治療や亡霊や精神異常者が三つ巴の様相を呈しながら、お約束どおり最後はひとつに収束していく。さらにお約束の上塗りをして映画は終わる。やや予定調和な感じもしたが、お約束を有効活用するジャンルだからこれでいいのかもしれない。この映画はスタイルとして過度な恐怖描写をしていない。アンバー・ハードのトラウマの闇の描写も決定力に欠ける。しかし、映画職人の技巧を堪能するジャンル映画としては、かなり楽しめるものだった。95点。