LOFT ロフト

黒沢清、2005。この映画を語るにはいろんな視座があると思う。それらはそれぞれに正しく、それぞれに間違っている。映画とはそういうものであり、その点でこの映画は正しい映画といえるだろう。カメラの存在が興味深い。冒頭から部屋にいる中谷美紀を監視カメラのような位置からとらえるショットがある。通常ではあり得ないショットだ。監視カメラのショットともちがう。カメラは誰かの目であるかのように見える。そして、この映画は幽霊の目と通常のショットの区別を曖昧にしている。さらには、映っている中谷美紀の存在も曖昧である。幽霊やミイラと、中谷美紀は、とかく類似と反復によって強調される。そして、もうひとりのまともな人間らしき豊川悦司には人間味がない。現実と空想が曖昧ななかで描かれる世界は、西島秀俊によって強烈に強調される。あれだけ中身のない人間を演じられる西島もすごいが、あれが現実寄りの世界だと一応提示するこの映画もすごい。非物語世界のホラー的とはいえない奇妙な音や、現実にはありえない光源から放たれる光や、暴風や豪雨などの自然の人工的な使われ方も特筆すべきだろう。カメラをブンブン振り回したりもするし、斜めの構図を見せておいて、唐突な横の構図という飛躍までやってのける。すべてが虚構に彩られたその世界はとても映画的である。多かれ少なかれ映画というものはそういうものなのだが、この映画の映画=虚構との戯れ具合は重症である。論理性が破綻気味な物語なのだが、最後は類似と反復が功を奏し、より深遠なる反復が描かれる。暴風のキスシーンをはじめ、すさまじく美しいショットがいくつかあった。95点。