たのしい知識

ジャン=リュック・ゴダール、1969。この映画はルソーの教育論『エミール』を映画したもの。商業映画と決別した時期のゴダール作品だから、製作サイドから拒絶されたり検閲によって上映禁止になったりしている。1967年に撮影は開始されており、ジャン=ピエール・ゴランとの出会いが映画に影響を与えている。当然のことながら政治的な映画であり、映画そのものへの実験的アプローチが全編を貫いている。ジャン=ピエール・レオとジュリエット・ベルトという大スター夢の共演なのだが、そういう効果はさほど期待できない。断片的な言葉と音が挑発的に提示される。同期の語りと非同期の語りが入れ替わり、ノイズのなかでゴダールのナレーションが炸裂する。言葉との戯れはこの映画の最大の特徴だろう。映像のみのショットも存在はするが、音声のみのショットの多さにそれはあらわれる。暗転が効果的に使われており、ジャン=ピエール・レオとジュリエット・ベルトのいるテレビスタジオも、わずかな光の他は真っ暗である。映像も音声もゴダールらしくセンスのいいコラージュで彩られている。映像ではポスターなどに上書きされた文字が頻繁に使われる。ジャン=ピエール・レオとジュリエット・ベルトを楽しみにこの映画を見のだが、このふたりのシーンは映像としてはあまり魅力がない。しかし、それは当然ながら演出力不足を意味しない。音と光は大胆に演出され、光が暗転の無を強調し、言葉は意味と無意味を強調しながら、無意味な音と絡み合う。この映画は物語映画の形式がほとんど残されていない。それでも依然としてゴダールのポップな感性の魅力は残されている。90点。