サスペリア・テルザ 最後の魔女

ダリオ・アルジェント、2007。オカルトホラー映画。Bの系譜の正統なる継承者であるアルジェント演出が冴え渡っている。映画はまったく休息時間を与えることなく一気に突っ走る。重要人物が登場してから死ぬまでの早さが尋常ではない。それは脚本の早さよりも演出によって早められている。人物はアーシアの訪問によって登場することが多く、アーシアの移動シーンも多い。だからこの映画が、アーシアのスター映画としても機能していることは重要だ。アーシアの歩き方や着こなしはモデルのようにカッコいい。だからアーシアの動きそのものに魅了されてしまう。そしてB級脚本らしいテキトーなほのめかしがあり、テキトーな謎解きと殺戮が繰り返される。殺戮のスリルのなさはリアリティを生み、それがグロテスクな描写を強烈に印象づけている。クライマックスはBを高らかに宣言し、アーシアもBな行動でそれに答える。アルジェントは視覚の関係性を好んで描く。この映画ではアーシアの能力としてそれは描かれる。しかし、アーシアはその能力ゆえに魔女との接近を強いられる。アーシアと刑事の関係が映画を物語っている。書店において、見える見えないという関係性がふたりの急接近を作り出し、その後テレビにおいて、見える見えないの関係が反復される。終盤、館のシーンでのアーシアの長回しは刑事の存在によって止まる。そこでふたりは見える見えるの関係になるのだが、刑事が死んでしまっては意味がない。館から脱出する美しいラストショットで、見える見えるの関係が反復されるとき、ようやく魔女との戦いと濡れ衣の終わりが告げられることになる。100点。