スイート・スイート・ビレッジ

イジー・メンツェル、1985。チェコの田舎の村が舞台となっている。物語は、知的障害者オチクのプラハ引っ越し話によって均衡が崩れる。均衡が崩れても、牧歌的な村がゆえに、物語は色恋沙汰を交えながら喜劇的にゆったりと語られる。終盤になってオチクはプラハへゆく。そして、オチクの家がオチクの知らぬところで売られようとするとき、オチクが村にもどり物語の均衡がもどることになる。冒頭の道路のシーンは何度も反復される。太っちょのおっさんとオチクが並んで歩き、脇で車とドクターがトラブルを起こしている。それが同じショットの構成で反復される。オチクと車、おっさんとドクターは類似の関係にある。冒頭でそれらはクロスカッティングされ、村自体が規定されてゆく。村人には寛容の精神があり、自由を謳歌しており、ブルジョワへの不信感がある。そんな村人の悲喜こもごもが温かい眼差しで描かれる。この映画は何度も登場する場所が複数あるのにもかかわらず、その位置関係はほとんど説明されない。だからこそ、複数の位置情報を持つ道路が強力に設定づけられる。おっさんとオチクとドクターと車が村を象徴するのであれば、当然のように道路も村を象徴している。道路にあるオチクの家の売却は、村の崩壊を示唆する。それにより、おっさんの行動が生じて物語の均衡が保たれることになる。物語の構造は、Aの均衡状態が崩れBの状態になり、最終的にはA’の状態にもどることが多い。この映画におけるA’の素晴らしきチャーミングさは、反復される道路のシーンによってひときわ輝きを増し、見る者に笑顔と感動を呼び起こすものになっている。100点。