万事快調

ジャン=リュック・ゴダール、ジャン=ピエール・ゴラン、1972。商業映画と決別し、「ジガ・ヴェルトフ集団」として映画産業の外側で政治映画を製作していたゴダールが、映画産業の内側、つまり商業映画として製作した政治映画である。その状況がそのまま映画のスタイルにあらわれている。イヴ・モンタンとジェーン・フォンダが夫婦役で出演し、夫婦仲は険悪となるのだが最後にはよりを戻す。しかし、この映画は常に映画の慣例に従うことを避ける。商業映画にはスターが必要だというナレーションがあり、イヴ・モンタンとジェーン・フォンダが配役され、よりを戻す夫婦を示すふたつのショットがあり、ナレーションがその状況を突き放したりする。男女の関係が、映画の慣例に従わない形で描かれる。慣例に従わないという意味では、前半の工場のシーンが最も革新的だろう。しかし、後半に比べ工場のシーンはやや退屈であり、より映画の慣例に従う後半のほうがおもしろい。カメラは常に固定され、動きは上下左右の移動ショットのみで構成される。とりわけ左右に動くショットは多義的に多用される。工場での生産とスーパーでの消費は、流れ作業的な類似が風刺され、それは左右に動くゴダールらしい偏屈なカメラによって強調される。スーパーのシーンでは、左から新左翼の活動がはじまり、右で治安部隊に鎮圧される。カメラに向かって主義主張を繰り返す経営者や組合員などのショットがいくつかある。しかし、カメラの存在が提示されないため、空虚さがとりわけ助長される。政治性自体よりも、政治性から派生した商業性や芸術性や、相変わらずの独創性はとても興味深いものがあった。95点。