20センチュリー・ウーマン

マイク・ミルズ、2016。劇的な物語とは対極にあるような、やさしくおだやかな物語である。ルームシェアをする5人のキャラクターの描かれ方が見事だ。すべての人物がキレたり殴ったり破壊したりしないのはすごくいい。マイク・ミルズの育ちのよさが映画全体にあらわれている。この映画の最大の特徴は、そういったやさしさであり寛容性である。この映画は、人の誕生や性別、人との距離や人への影響といったように、とにかく人がテーマになっている。グレタ・ガーウィグは子どもが産めないからだになる。エル・ファニングはマトモなビッチであり妊娠検査薬を試す。そしてアネット・ベニングは子どもを産んでおり、それがマイク・ミルズ的主人公である。母は息子が理解できずガーウィグとファニングに教育を託す。しかし、音楽や女性の性などの影響によって母子の距離は広がる。パンクに戯れる若者たちとオールドジャズを聴く母との対比があり、若者たちの行動力が母の孤立を強調する。フェミニンな成長を期待しているであろう母と、1979年のフェミニズムとの距離が圧倒的だ。母と息子の世代の距離は、パンク世代と大恐慌を知る世代としてたびたび示される。それは拡張され、女性たちの価値観の距離にまで及ぶ。それでも映画は母を孤立させたりはしない。ルームシェアの同世代男とはうまくやっているし、世代間の軋轢も生じるのだが、互いを蔑むようなことは絶対にしない。いろいろあって母と息子は距離を縮める。しかし映画はその距離を簡単に引き離す。それは絶望的な距離なのだが、あくまでこの映画らしくやさしくおだやかに描かれる。邦題がとてもむごい。95点。