ウラジミールとローザ

ジャン=リュック・ゴダール、ジャン=ピエール・ゴラン、1970。西ドイツのテレビ局のために作られた映画で、毎度のことながらテレビ放映を拒否されている。ゴダールの政治映画としてはかなりわかりやすい部類のものだろう。シカゴ・エイトを題材にした裁判劇という形式がわかりやすさを演出している。映画は裁判からそれほど逸脱せずに描かれる。喜劇や風刺という側面は多分にあるものの、終盤のかなり長い真面目なメッセージが示す通り、帝国主義やブルジョワを痛烈に批判する政治教育映画としての側面が強い。裁判劇以外は物語的要素がない。裁判劇で顕著に見られる平面的なショットは登場人物を戯画化している。アドルフ・ヒムラー裁判長は、この映画の風刺や喜劇の王様である。とにかくナレーションなり登場人物が常にしゃべっているか、ロック音楽が消費されるように垂れ流される。退屈する時間がかなり多くあった。わかりやすい映像演出としては、人物を完全にかぶらせることや、ポスターなどへのメッセージの落書き、暗転の有効利用などがある。それらはこの映画ではじめて試みられた手法ではない。しかし、男性のうしろに女性を配し、女性がしゃべり男性が口パクをする意味や、暗転の意味をシカゴ・エイトがシカゴ・セブンとなる所以である、ブラック・パンサー党の黒人ボビー・シールの不在だと明示することや、落書きが長文の政治的メッセージであることなどは、いつになく具体的だ。この映画は、例えば『たのしい知識』などと比較しても、ゴダールらしいキャッチーでポップなセンスがかなり排除され、より政治的なメッセージ性を帯びた映画になっている。90点。