スプリング・フィーバー

ロウ・イエ、2009。この映画の撮影スタイルは独特のものがある。ロウ・イエは前作『天安門、恋人たち』で、5年間の映画製作禁止処分をくらった。この映画は謹慎中に南京でゲリラ撮影して作られたもの。独特の撮影にはまずその状況が大きく作用している。物語はゲイにまつわる5人の男女の微妙な関係が劇的に描かれることなく描かれる。物語を追ってみてもどこかに行く、もしくはどこかへ帰るシーンがほとんどであり、行く先々でセックス以外のディープな会話が交わされることはほぼない。それなのにこの映画はなぜ魅力的なのだろう。まず、わかりやすい脚本があり、わかりにくい心理描写がある。それでも愛についての物語だということは明白である。そのさじ加減が素晴らしい。人物の移動のほとんどが反復によって成り立っており、見ていてやみつきになる。手持ちのカメラが人物を追う。ゲリラ撮影にしては撮影も編集もセンスがよすぎる。そして人間関係も行動もまた反復をみせるのだが、重要なことを示唆するものではないだろう。終盤の3人組のあてどない旅が象徴的だ。そのあてどない旅で映画が終わることはない。女性が逃げてみんな家に帰って日常生活にもどる。このシーンに限らず、出来事の簡潔な描写はすばらしい。反復される物語が定住感をなくし、3人組の当てどない旅のなし崩し的状況が、逆に日常こそ当てどない旅であることを強調する。覗きの演出も見逃せないものがあるし、台詞の少なさも見逃せない。この映画は都市における運動と移動の映画である。そこに漂う愛の映画なのだ。この映画はそれを寛大さをもって描いている。100点。