夜の人々

ニコラス・レイ、1948。デビュー作にして、最高傑作との呼び声も高い映画。タイトルが示すとおり夜の人々が描かれる。ほとんどが夜のシーンであり、照明はわずかしか使われておらず、フィルムノワールの世界観が強烈な形であらわれている。夜の人々は冷酷非道なキャラクターばかりで味方はおらず全員敵である。そこでファーリー・グレンジャーとキャシー・オドネルが出会うことで、メロドラマの要素が加わる。オドネルは家族の極悪非道ぶりを完全に蔑んだ目で見る。それにより唯一の善人であるグレンジャーの違いに気づいてゆく。このオドネルの強烈な蔑みの目が、ふたりの関係性の構築の突破口になっている。それによりグレンジャーの時計のプレゼントも突飛なものではなくなる。この極悪集団のなかでふたりの関係性が構築されるさまは見事である。ふたりが逃走してからはちょっとダレる。上手く逃げられず、すぐ極悪人に捕まってしまう。とはいえ、逃走中のふたりの幸せそうな姿をこれでもかとたっぷり見せたりもする。最終的に極悪人に助けを借りようとして、当然ダマされてしまう。基本的にはバカップルである。この映画では、カネを得るだけでも同罪であり泥棒だと、オドネルは言う。対して、マスメディアは、なにもしていないオドネルを凶悪犯罪者に祭り上げられる。ここには強烈なメディア批判が見て取れる。この映画はハリウッドの慣例を守りながら逸脱している。低予算な作りや照明、ややのんびりした物語、男と女と車のシーン、バッドエンド、これらはヌーヴェル・ヴァーグが好んで採用したものであり、ニコラス・レイだけではないにしても、その影響の大きさが伺える。95点。