ヤクザと憲法

土方宏史、2015。地上波テレビ局が作ったドキュメンタリー映画。72分版がテレビで放映され、その後96分の劇場公開版が上映された。ヤクザの事務所にカメラが入るというもの珍しさが先行する形で映画ははじまる。事務所密着型ドキュメンタリーなのかと思いきや、ヤクザの歴史とその盛衰にまで話は及び、衰退の原因となる法律などが描かれる。弁護士も登場して警察の得意技不当逮捕などが描かれる。そうして、基本的人権を脅かす権力の横暴というテーマが浮かび上がる。かなり政治的な映画だ。政治映画の文脈で、公式被差別部落のようなヤクザの事務所での日常が描かれる。これは、生活保護費をカットされる生活保護受給者と同じ構図であり、テレビ局が政府から受ける圧力も同じだろう。ただ、描かれ方に目新しさはない。映像としては組長が街に出る姿をうしろから追うカメラが素晴らしい。あそこはもっと見ていたかった。事務所密着型ドキュメンタリーとしては、想定内のことが想定内におさまってゆく。日常が丹念に綴られているわけでもない。画になる組長は事務所でのインタビューがいくつかと、ラストの印象的な光景が見られるくらいである。焦点はヤクザでもない少年に当てられている。被差別部落状態の事務所を少年は聖地だと言う。少年は自らを語るほどの能力がない。ゆえにカメラは少年を取り巻く環境をとらえることで事務所の生活をとらえようとする。少年を拾うヤクザと捨てる社会という構図も見え隠れしてくる。ただ、ドキュメンタリーとしてのユニークさは、ほぼこの少年に集約されるのだが、いかんせんテーマと絡めた魅力を引き出せていないように感じる。90点。