怒り

李相日、2016。豪華スタア夢の共演で贈るオムニバス映画。些細な描写を含めれば、実に多くの物事が語られている映画であり、それゆえ様々な主題において様々な解釈ができる物語らしい物語になっている。なかでも孤絶とか信用や不信といったものに重きが置かれている。映画は3つのオムニバス形式で成り立っており絡み合うことはない。犯人探しという、見る者の視線が3つのドラマの共通項として最も強く設定される。その常套手段に乗っかれる者はいいが、犯人探しに興味がない場合、このオムニバス形式はほとんど意味をなさない。3つの物語は同じような起伏をたどりながら進行する。東京パートは、妻夫木聡のエロスなゲイと、おかんのようにやさしい綾野剛が魅力的だ。カッコよくゲイを描けている日本映画はあまりないからうれしい驚きがある。そして豪華スタア夢の共演のなか、脇ながら抜群の存在感を放つ高畑充希が見事だった。千葉パートに関しては、エピソードとしてひとつ必要なのはわかるのだが、東京パートに比べると格段に落ちる。語らない疑惑の人物松山ケンイチに、それを信じ代弁する軽度の知的障害者の宮崎あおいに、認知症のような渡辺謙がいる。東京との対比としての価値や相互補完、謎の人物の存在、それを信じることなどは当然描かれるが、それ以外のものがほとんど描かれておらず魅力がない。沖縄パートのゴツゴツした感じは李相日らしくはある。物語の大きさも広さも他を圧倒しているし、出来事がテーマと絡み合っている。しかし、とても長い映画のなかで沖縄パートは半分もないだろう。その分、物語の密度は濃いのだが、映像としての密度は物足りないものがある。90点。