闇のバイブル/聖少女の詩

ヤロミール・イレシュ、1969。性と聖をモチーフにした宗教的なチェコ映画。物語映画なのだが、抽象的な映像美学こそがこの映画の見所だろう。血をめぐる物語となっており、物語が起動する少女が初潮の描写などが、あからさまではあるが抽象的に描かれる。物語は、ホラーではないゴシックホラーのような形式なのだが、その演出スタイルは驚きの連発である。カメラはハイアングルとローアングルを執拗なまでに多用する。さらにクローズアップも多い。いわゆる普通のショットがここまで少ない映画も珍しい。そして、重要なのはそのハイとローのアングルが映画に効力を発揮していることだ。チェコ映画特有の演出スタイルとこの映画の撮影スタイルはとても相性がいい。チェコ映画はミニチュアの造形物ようにキュートで潔癖な世界をセッティングする映画が多い。その造形物を、この映画のカメラは見事なまでに多角的あるいは立体的にとらえている。みずみずしい女性の描写も見逃せない。多くのチェコ映画と同様にこの映画も後世に多大なる影響を与えている。その代表例が女性の演出スタイルだろう。光と水と女性たち、仰向けに寝る女性と広がる長い髪、そして主人公の少女の描写などである。また、やはりチェコ映画って素敵だと思わせてくれるのが、助演の男の軽妙さや軽快さだ。ハットやメガネがいい感じである。映画は、全編に渡り映像美をこれでもかと見せつけておきながら、ラストシーンでさらなる飛躍を遂げる。祝祭的音楽に導かれ華やかなイメージが炸裂し、宗教画のような美しいイメージが連発されるのだ。前景の使い方が素晴らしい。100点。