あなたを抱きしめる日まで

スティーヴン・フリアーズ、2013。冒頭から、ジュディ・デンチとスティーヴ・クーガンのペアが誕生するまでのスピードに圧倒される。迅速に状況が設定される映画は多くあるが、この映画は緩やかにして迅速だ。そして、その誕生したペアの関係性に重きが置かれていないのもいい。よくある道中で変化するふたりの距離みたいなものは、基本的には描かれない。息子を探す母と、ジャーナリストという関係によって、ふたりのちょうどいい距離感が見事に演出される。それに、物語自体がカトリックの修道院を起点としており、ジュディ・デンチは敬虔なカトリックであり、常に神の存在を感じさせる。ゆえにこの映画のふたり道中にも常に神の存在があり、ふたりの一対一の構図が生じにくい。この映画は事実に基づく物語である。そのせいなのか、英国的気品のせいなのかわからないが、ベタな作劇がほとんど見られない。息子を探す旅の訪問先もそうだ。妹のあの感じだとひと波乱起きそうなのだが起きない。ゲイの友人も二度目の訪問はひと工夫あるのかと思いきやない。スティーヴ・クーガンの助演的好演は本当に見事だ。彼のあの目と唇と存在感がなければ、ジュディ・デンチ映画になってしまうところだ。ラストシーンの修道院のシーンはすべてが素晴らしい。宗教観が入り乱れて火花が散っているのがわかるし、赦しのダブルパンチは強烈だ。イエスの像を買って墓前に供えるスティーヴ・クーガンが素晴らしい。そして最後に反復されるべくして物語が反復され、それにひとこと添えるスティーヴ・クーガンもまた素晴らしい。95点。