ブリングリング

ソフィア・コッポラ、2013。実話を基にした物語だからこそ、ソフィア・コッポラがいかに独自のスタイルで映画づくりをしているのかがわかる。良し悪し好き嫌いは別として、テーマとスタイルの一貫性という意味において、ソフィア・コッポラほど商業ベースに乗りながら、匿名演出家的ではなく署名作家的なアプローチをする映画監督はあまりいない。この映画もいままでどおり少女たちをポップにアンニュイに描いている。しかし脚本はいままでとはかなり異なる。実話に基いておりミューズも登場しない。そのふたつの要素はセットになっており、脚本上ミューズを外している。この映画の若者たちの描かれ方はとても平面的だ。ミューズを登場させると当然立体的になる。平面的な描写は、これまでの作品よりも人物への客観的な視点を生んでいる。かといって、それは犯罪者たちを突き放すようなものではない。より客観的であり、かなり平面的なのだが、その平面性をソフトに包んでいる。犯罪者をあえて罰しようとはせず、若者の行動や論理を否定も肯定もしない。状況への恐怖や不安を煽ることもしない。そして、ソフトな形をとりながらも、若者やセレブたちのセレブリティ幻想の平面性を単刀直入に提示している。それを皮肉まじりに微笑んでいるような映画だ。映画の多くは窃盗シーンなのだが、当然のことながらスリルとサスペンスは起動しない。前作で変化した音楽は、圧倒的な存在感とともに戻ってきている。前作でも見られたサングラスの使い方が効果的だ。少女たちの乱暴な身体のとらえ方はもう職人芸だ。窃盗シーンはやや地味で、もっとポップに危うく描けたような気はする。95点。