マイノリティ・リポート

スティーヴン・スピルバーグ、2002。この映画はコマーシャルな作品としては陰鬱で黙念としすぎており、スピルバーグやSF映画マニア受けとしては光るものはあるにせよ、細部に限らず無頓着な部分が多すぎる。そして知的に映画を楽しむ人から見るとコマーシャルな部分がとても邪魔である。この映画はトム・クルーズ主演の問答無用のスタア映画だ。強いヒーローではあるのだが、いかんせん陰鬱すぎる。シャブとワーカホリックで死んだ息子のトラウマを払拭しているなんて重い。この映画のハイライトはトム・クルーズが予知通りに殺しをするかどうかというシーンだろう。まず、そのシーンをうまく演出できていない。そして、そこにいたるトム・クルーズの動機づけは、自分は人を殺したりなんかしない、それを証明してやる、というのがあるだけだ。女連れによっていいシーンは生まれているが動機づけにはなっていない。マイノリティ・リポートの存在が大きな動機づけになっていないことはとても奇妙に感じた。結局マイノリティ・リポートは、誤認逮捕や冤罪を暴く方向にはまったく向くことなく、特殊事例的な意味しか持たない。トム・クルーズが未来を一応変えたことで物語は激変する。激変するといっても映画的に見れば予定調和的な激変である。ひとりの無能なオッサンが悪となるフィルム・ノワール的世界が登場するのだ。ラストは見るに値しないだろう。コリン・ファレルだけは素晴らしかった。サマンサ・モートンの登場回数の少なさは不気味だった。映画を通じて最低限のスリルは維持できていたし、撮影も普通によかった。娯楽としては行き詰まりを感じた。90点。