ブロンドの恋

ミロス・フォアマン、1965。シニカルでキュートな少女の恋の物語。次作『火事だよ!カワイ子ちゃん』でも見られたサイレント喜劇のような演出がここでも見られる。しかし次作のようなぶっ飛んだドタバタ群像劇ではなく、物語は少女の恋を中心に描かれる。多くのチェコ映画が持つ寛容性をこの映画も持っている。あるグループとあるグループが対立の構図になったとしても、グループ内の結束が甘いために対立の構図がうやむやになる。冒頭の3人の軍人と女子工員の関係はとてもグダグダになっているし、少女がプラハの男を訪ねるときも同様に構図がうやむやになる。男の両親にとって少女は共通の外敵なのだが、そういう展開にはならずに意見が対立する。象徴的なのは、男と両親が3人で寝るシーンだ。会話も人もズレまくってコメディになる。その裏で監禁状態の少女の涙が見えるのだが、感傷に浸る間もなく冒頭で見られた男のモチーフが反復される。登場人物はとにかく探りや疑いの視線を相手に送るのだがその目はみなやさしい。だから見ていてうれしくなってしまう。演出は堅苦しさがまったくない。人物の表情や身体は隠し撮りのように自然であり、演技には即興的な自由さがある。それをとらえるミロスラフ・オンドリチェクの撮影が素晴らしい。モノクロ映像のなかで、ベッドやシーツの白とブロンドの白と少女の肌の白が美しく調和するショットはとても美しい。冒頭の少女のロックンロール弾き語りの爆発力と、終盤のいわゆる「ピカソのギター」を生かした演出も見事である。ほろ苦い少女の恋の物語と喜劇的要素の素敵な共存が、この映画をユニークなものにしている。95点。