緋文字

ヴィム・ヴェンダース、1972。これまで幾度となく映画化されてきたホーソーンの有名なキリスト教文学作品の映画化。これがヴェンダースの二作目で次作が『都会のアリス』となる。しかし『都会のアリス』との共通点はほとんど見られない。時代も国もテーマも異なるのだが、物語という意味での違いが大きい。スタイルとして『都会のアリス』は物語形式から開放されている一方、この映画は物語形式から逸脱することはない。『都会のアリス』とのつながりでいえば、男リュディガー・フォグラーと少女イエラ・ロットレンダーはこの映画で出会い、この映画で仲良くなり、ヴェンダースはそんなふたりを見て『都会のアリス』を着想したらしい。実際わずかにあるふたりのシーンは、ついつい『都会のアリス』を想像してしまうような微笑ましいものだった。映画はやはりイエラ・ロットレンダーが素晴らしい。それが、ロビー・ミューラーの見事なロケーション撮影によって引き立っている。ロケーション撮影は演出スタイルも撮影スタイルも素晴らしかった。音楽は奇妙なポップさがある。映画に不釣り合いな音楽が不釣り合いなタイミングで流れる。この確信犯っぷりも退屈しのぎにはなった。脚本は説明をかなり省いており、ざっくりしているというのか、大胆というのかわからないが、無駄に情感を演出することなくテキパキと進む。そう感じたのは単にキリスト教を知らないからなのかもしれない。この内容だと日本では劇場未公開というのもわからないではない。とにかくいろんな状況があまりにも自分からかけ離れすぎていて、ロビー・ミューラーとイエラ・ロットレンダーだけが近くに感じられた。90点。