愛して飲んで歌って

アラン・レネ。2014。舞台劇的にちょっと小細工を施しただけの映画という印象。この映画で特筆すべきなのは、脱リアリズムであり過剰なフィクション性だろう。文学、演劇、音楽、コミックまでが入り乱れ、特に演劇的要素は強い。レネ自身の死を意識したと思われる圧倒的な不在による死の演出も注目すべきだろう。しかし、死のモチーフの描かれ方は演劇によく見られる手法である。舞台劇らしく物語の焦点がぶれることはない。ただいろんな語りの要素を持ちながら、舞台劇が占める割合が大きすぎる。ならば、ミュージカルはないのだが、劇中劇と同様に、もっと強調されてもよかったと思う。ちょっとこんなのやってみました、お酒でも飲みながら楽しんでね、という感じは遺作としては結構なことなのだが、もっと突飛なアイデアをサラリと演出して欲しかった。これでは舞台劇を見るのとあまり変わらない。ならばなぜそれを映画として見ているのか。その点で中途半端な印象が残った。どちらも虚構なのだが、一般的な劇映画の戯れが、この映画では舞台劇に侵食されており、映画でなくてもいいんじゃないかと思わせるものがある。アラン・レネの過去の偉業があり、その遺作においてレネは不在の男として自らを描いた、という事柄以外のものをこの映画から受け取るのは難しい。もちろん個人的な舞台劇への苦手意識もあるし、特にフランスの舞台劇への苦手意識は大きい。さらにアラン・レネの近年の映画はことごとく残念な結果に終わっていることを考慮すると、これは見るべき映画ではなかったのかもしれない。85点。