アクト・オブ・キリング

ジョシュア・オッペンハイマー、クリスティーヌ・シン、2012。スカルノ政権下で起こったインドネシアの9月30日事件についてのドキュメンタリー。被害者側から撮る予定だったのが、当局から接触を禁じられ、加害者側から撮ることになった。加害者のなかでも殺人部隊であったヤクザを取材対象にしており、そのヤクザたちに虐殺の再現映画を撮らせるというのが映画の流れになっている。映画は1000人殺したとされるヤクザの親分アンワルを中心に語られる。状況がすさまじければ内容もまたすさまじい。映画にまつわる象徴的な現象が見えてくる。アンワルが映画にリアリティを追求すればするほど、現実の残虐性ゆえにフィクションになってしまう。政府の人間には描写が残虐だと言われ、当の本人もリアルな描写にぞっとする。プロパガンダ映画に対するアンワルの確固たる自信はもろくも崩れ去る。自分を主演にしてヒーロー映画と虐殺映画を同時に撮ろうなんて無理な話のは最初からわかっている。だがその過程でアンワルの内面は見事に照射されてゆく。映画は役柄を入れ替えて、アンワルは被害者側に立ち首を絞められる。その映像を見たアンワルは被害者の気持ちがわかると言う。しかしドキュメンタリーはあっけなく突き放す。ただの映画だと。アンワルは学生映画を撮る青年のように、映画において自分探しをしている。ハリウッドスターに憧れ、映画のように人を殺し、その後のスハルトによる思考停止があり、40年ぶりにそれを再現しようとしたときの齟齬。嗚咽というモチーフの反復と差異が、演じるという映画のテーマを見事に浮き彫りにしている。100点。