ロスト・シティZ 失われた黄金都市

ジェームズ・グレイ、2016。最も外さない映画監督のひとりであるジェームズ・グレイの事実に基づく冒険もの。しっとりとした作風と相性抜群なダリウス・コンジの美しすぎる映像に酔いしれている時点で半分ノックアウト状態になる。しかし、この映画はいつものような濃密度な作劇が見られない。141分という尺があるのにもかかわらず、ダイジェスト版のような仕上がりになっている。そこには予算の問題があったと思われる。ジェームズ・グレイの映画は評価の割に売れないのだ。この映画では民族学における構造主義的概念が明確に提示される。冒険家であるチャーリー・ハナムは、西洋の歴史に基づく価値観に疑問を投げかける。それは第一次世界大戦とアマゾンとの対照によって強調される。冒険や戦争という男のマッチョな世界がしっとりと描かれ、女性の地位がマトモなのもジェームズ・グレイらしい。妻シエナ・ミラーは一緒に探検に行くと言いチャーリー・ハナムと喧嘩する。映画を終わらせるのも彼女の役割だ。この映画は男のロマンと隣合わせの喪失感が描かれる。いまいる場所を離れてまだ見ぬ場所を探す。それは天国への階段のようであり死をイメージさせる。夫は妊娠中の妻に、死にゆくものより生まれてくるものを愛してくれ、みたいな手紙を出す。そして十数年後、夫はその子どもとともに冒険に出て行方不明になる。この冒険映画は男のロマンを弱くて哀しい宿命として描いているように見える。それに対して、行方不明になっても決して諦めようとしない妻の強さは圧倒的だ。ラストはジェームズ・グレイらしく示唆に富んだ優れたものになっている。95点。