アトミック・ブロンド

デヴィッド・リーチ、2017。ベルリンの壁崩壊の裏側で語られるシャーリーズ・セロンを愛でるスパイ映画。いろんな国のスパイや二重スパイや三重スパイが出てきてわけがわからない。そんな複雑な状況を脚本がより複雑にしてしまっている。ただ、この映画はシャーリーズ・セロンを愛でる映画なのだから、愛でられるセロンに注目して見るべき映画なのだろう。物語はセロンが過去を回想する形式で語られる。つまりセロンは死なずに生還することがここで保証される。これにより映画の見方としては、物語を放棄してセロンを堪能するだけの映画として楽しむことができる。スパイ映画だからかなりダークなムードが漂う世界観になっている。そこを救っているのがセロンと音楽だ。音楽は大胆に物語の中と外を自在に行き来して陰鬱な映画を盛り上げている。ベルリンの壁崩壊の頃の音楽が中心で選曲もいい。ベルリンの街の青く冷たい映像が印象的だ。強烈な視覚効果を生み出すカラフルな室内照明はセロンのためにあるといってもいい。超長回しアクションはセロンを愛でる映画としては圧倒的なハイライトだ。セロンを愛でるという目的がなければ、活劇として地味すぎるしカメラの作為性はうっとうしいものになってしまう。この十数分の長回しにより見る者はセロンと同期し、疲弊し傷ついてゆくセロンの生々しい時間経過を共有することになる。セロンを愛でる映画としては最高の演出であり、セロンもそれに十分答えるだけのアクションはしている。この映画はヒッチコックへのオマージュがいくつも登場する。雨傘の演出なんかはヒッチコックすごいなと改めて思わせてくれた。90点。