こねこ

イワン・ポポフ、1996。ロシア映画が好きでも猫が苦手という場合、この映画はそれほど見る価値がないと思う。つまり猫映画としてはよい映画だとしても、ロシア映画としての魅力は乏しく、ロシア映画特有の演出はあまり見られない。猫と同じ目線のカメラや、猫の主観ショットやそれに類するショットの使い方は中途半端だし、人間パートの描写にはロシア映画らしいキュートな佇まいが希薄だ。素晴らしかったのは、ハイライトシーンで見られる映画音楽の使い方だ。物語の外から延々と音楽が流れる。そのなかで猫たちが描写されてゆき、その音楽が実は劇中音楽であるというところを見せて音楽が終わる。この演出は度々見られるのだが、台詞のない猫のアクションの映画音楽として十分に機能しているし、劇中音楽になる流れが自然で、あざとさがなく新鮮な驚きがある。その効果がハイライトシーンで決定的なものになっている。ただやはり猫が苦手な者にとって、猫を見る映画というのはとても苦痛な体験だった。この映画は例えば、鈴木卓爾の『私は猫ストーカー』と同様に猫のハードルを超えるようなグレイトな映画ではない。ただ映画としてどんなに素晴らしくても、猫によってすべては台無しになるような気はする。例えばゴキブリが主演で、その気持ち悪さが全開なのだが、映画としては素晴らしい、なんてのは想像できない。やはり苦手なものはどう見せられても苦手なのだ。物語としても地上げ屋のような現実的描写、サーカスのような非現実的描写、ともに中途半端な印象がある。90点。