プラハ!

フィリプ・レンチ、2001。プラハの春からソ連の軍事介入までを、ポップなミュージカル仕立てで描いている。『ロシュフォールの恋人たち』のようなキュートさがある一方、政治に翻弄される恋物語という意味では『シェルブールの雨傘』のようだ。オープニングはミロス・フォアマンの『ブロンドの恋』のオマージュに見えるし、駅のシーンはイジー・メンツェルの『厳重に監視された列車』を思い起こさせる。当時のチェコ映画に散見される、質素でカラフルで独特のキュートさがこの映画でも見られる。人物の衣装や表情やお決まりのズレたメガネもいい感じだ。この映画のほとんどのプロットは恋にまつわるものだ。ここで重要なのは主人公の女の恋の相手が脱走兵であるということだ。つまりハッピーエンドはまずない。例えば『厳重に監視された列車』の主人公はキュートな映画のなかでキュートなまま悲劇的な結末を迎える。チェコ映画の魅力はキュートさの破壊力と包容力にある。しかし、この映画の終盤にはその魅力がない。主人公の家族は国外へ脱出し、脱走兵は警察につかまり刑務所にいる。プラハの春の終わりはシリアスに描かれ、キュートさが持続させることはないのだ。キュートからシリアスへの以降には、この映画の意図を感じるのだが、それがうまくいっているとは到底思えない。キュートを持続させながらシリアスな描写をしてもらいたかった。この映画は、プラハではなく小さな村が舞台なのだが、自然が美しくカラフルな色づかいも素晴らしい。特に雨のなか主人公がジャンプしたりするスローモーションのシーンは目を見張るものがあった。90点。