天使

エルンスト・ルビッチ、1937。この映画は、映画自体の佇まいがすごくカッコいい。2男1女の大人の恋の物語で、脚本が渋くてカッコよすぎる。そしてこの恋愛遊戯のなかでデートリッヒがルビッチの演出を超えた格調高き存在として見事な輝きを放っている。ここでルビッチ演出は、全編を通じて炸裂しているわけではない。慣れた手つきで演出しながら、ここぞというときに、見せない演出や扉の演出を炸裂させる。物語はデートリッヒがパリにあらわれ、パリから消えるというパターンの反復によって語られる。最初にデートリッヒが消える公園の演出がすごい。デートリッヒを探す男すらカメラは撮さない。見せない演出は、男がデートリッヒの夫の家で写真を見るところで反復される。夫と男が座っていて、男が立ち上がりデートリッヒの写真を見に行くが、カメラは動かずそのままシーンは終わる。扉の演出が相変わらず素晴らしく効果的だ。印象的なのがパリの邸宅の白い部屋と扉だ。ここでは扉の向こうに天使がいる、とまで言及される。最高のラストショットは見ていて思わず声を上げてしまった。すべてを語るデートリッヒのフレームイン。白い部屋に黒い衣装、毛皮のやわらかさ、デートリッヒの所作などすべてが完璧であり、完璧に映画を終わらせている。ラストショットで映画の印象はずいぶんと変わる。そういう意味ではこの映画は最高のラストショットで終わるから最高の映画ともいえる。実際ほかの部分も無駄がなく、デートリッヒも堪能でき、ルビッチ節も炸裂しているのだから、映画を見る幸せに酔いしれているうちに映画は終わってしまった。100点。