最後の人

F・W・ムルナウ、1924。この映画は新しい手法で撮影されている。大まかな脚本があるのみで、カメラは移動が自由にできるコンパクトなものが使われた。字幕がほとんどなく、映像だけで物語が語られている。冒頭の流れが素晴らしい。移動撮影から回転扉へと至り、大荷物を運ぶエミール・ヤニングスの姿をとらえる。ドアマンのヤニングスはその大荷物のせいでトイレ掃除に配置換えとなる。それを言い渡されるシーンも見事だ。まずヤニングスがメガネをかけるまでじっくりと緊張感を維持し、そのままカメラは窓をすり抜ける形で外から部屋のなかに入る。移動カメラはこの映画で非常に効果的に使われている。ヤニングスが制服を盗んで逃げるシーン。カメラはヤニングスを追い越し、居眠りする受付に移動する。そこを影のようにヤニングスが走り抜ける。そのあとがまたすさまじい。外は暴風が吹いておりヤニングスが振り返るとホテルが倒れてくるようなショットになる。その後も酩酊するヤニングスの主観ショットから夢へと移行するカメラが素晴らしい。完全にピンぼけで繰り広げられる夢の世界。歪曲した回転扉。ドアマンと掃除人を象徴する回転扉とふたつの扉の対比はすさまじい。そこで妻と目が合うシーンも衝撃的だ。そしてヤニングスの噂は団地を駆け巡る。ここで見られる映像表現は極めて映画的なものだ。ベランダからベランダへ、窓から窓へと噂が伝聞される様子が、素早いパンやクローズアップで描写される。ヤニングスの演技もすごい。まともに立ってる時間がほとんどない。彼には常に斜めの構図がつきまとい、そこには彼の心象が見て取れる。ハッピーエンドは蛇足だった。100点。