アンドレイ・ルブリョフ

アンドレイ・タルコフスキー、1966。15世紀のロシアの偉大なイコン画家アンドレイ・ルブリョフの23年間を描く3時間超の大作。とはいえルブリョフの生涯をたどるだけの映画ではなく物語は重層的に語られている。ロシアの歴史が俯瞰され、終盤には物語らしい展開がある。当然宗教的な暗示も多く見られる。まず圧倒的な映像美学に驚かされる。ショットのスタートで度肝を抜かれ、カメラが動くにつれ、その恐るべき映像演出があらわになるのだ。イメージショットと物語上にあるショットは区別なく配置される。物語は2部構成で10のパートに分かれているのだが、それでも一般的な尺度からすればわかりにくい物語だ。終盤の展開の素晴らしさがこの映画を決定づけている。ここでも物語は重層的に語られる。しかし、わかりやすい部分だけ見ても十分に刺激的だ。まずタタール人の襲来によるいろんな意味での破壊が起こる。ルブリョフは絵を描くのも口をきくのも封印して修道院にいる。一方で身内をタタール人に殺された鋳物師の息子がいる。この青年が破壊からの創造を見事にやってのけるのだ。青年の危うさと美しさたるや映像美を超えるものがある。それを見つめるルブリョフの姿。そして鐘は見事に完成する。そこでルブリョフは15年の沈黙を破り青年に対し、イコンを描くと言う。破壊からの創造という意味では、今も昔も若者のバイタリティというのはすさまじいものがある。それが表出することによりルブリョフは影響を受けるのだが、その影響の深みや突き動かされる衝動が見事に伝わってくるのだ。ラストはルブリョフの魂を見ているようだった。100点。