生きるべきか死ぬべきか

エルンスト・ルビッチ、1942。笑いの攻撃対象がナチスである場合、そこに劇団との共通項としての虚構性を見出し、喜劇へと転化してゆく。その手腕たるや見事なものがある。演じることの虚構性が入り乱れ、喜劇集団と化すナチスが見ものだ。フェードアウトの多用は明らかに映画に舞台演出を持ち込み、ナチスをからかっている。喜劇スタイルはスラップスティック・コメディで、これまで見てきたルビッチとはちがった。その点で力強い喜劇だが洗練された感じは衰退している。ショットの構成、人物の動など、ルビッチほどに映画を教えてくれる監督はいない。この映画でもそれは十分に見ることができる。また、扉の演出や視線からのカットつなぎや足のモチーフなどはルビッチならではのものがある。ただこの映画では、ルビッチの上品さとスラップスティックが見事に調和しているとは思えない。やはりルビッチ洗練はされた喜劇という印象がある。この映画は、劇団女優夫婦の活躍が素晴らしいのだが、とりわけキャロル・ロンバートは存在感は特筆すべきだろう。ほとんど囚われの身のような印象があるのだが、何をも恐れぬ状況対応能力がありそれゆえにエレガントでありつづけている。そのふるまいは夫のジャック・ベニー共々すさまじいものがある。この映画はルビッチが得意とする演出を敢えて過剰に押し出すことはしていない。より職業監督に徹している部分があるように見える。だからこの映画は演出家ルビッチのトータルコーディネート力が際立っている。「ナチス」と「ハムレット」が巧みに絡んでいくストーリー、とあったのだが、そのあたりはよくわからなかった。95点。