永遠の語らい

マノエル・ド・オリヴェイラ、2003。前半はとても優雅な観光案内といった感じでゆったりとしたときの流れとともに進む。ショットの設計が素晴らしく、飽きさせることなく歴史が語られてゆく。後半は豪華客船でテーブルを囲む4人の会話が中心となる。前半で既に、この映画は9.11以降の映画であることはわかる。宗教戦争や文明の発展のなかで犠牲となる死について多くが語られている。船の上の会話ではより明確にテロ以降を示唆する。原理主義が語られ、西洋文明とアラブ文明が語られたりする。前半では具体的な事物や歴史を主人公である教授が娘に教えるという形の会話が多い。後半ではそれをまったく変化させている。具体的な事物はないし、歴史はより個人の歴史だったり、大きな歴史は歴史観でしかないものも多い。このふたつの異なる会話で、オリヴェイラはテロの付近にある物事や概念を、慎重さを出すことなく慎重に描いている。ここでも優雅なカメラが絶妙に豊かな空気感を演出している。語られる場所も重要だろう。3人の女性は豪華客船でしか語らない。当然ブルジョアジーであるし、いかにもな映画装置だ。べたのテロと船上の会話には天と地ほどの隔たりがあるように見える。その距離をオリヴェイラはドラスティックに縮める。そしてはじめて物語らしいスリリングな展開が生まれ、それが端的に処理され、ストップモーションのなかで悲劇が起こる。この映画は寛容な映画だ。包容力のある映画だ。それはテロ以降の社会的メッセージとして表出するのではない。あくまで映画そのものが持つ豊かな受容性として見えてくるのが素晴らしいのだ。95点。