愚なる妻

エリッヒ・フォン・シュトロハイム、1921。この作品は5時間超の大作だったのだが、公開されたのはユニバーサルが短縮したものらしい。そのせいか描写はやたらとねちっこいのに、脚本として見ると描写不足が多々あってわかりにくいという不思議な映画となっている。『グリード』にも同じことがいえるのだが、シュトロハイムの映画は大長編のドラマとして作られている。しかし、想像するにそれらのドラマは長時間化が進む現代の感覚を持ってしても、まず3時間は超えないであろうというくらいのドラマだ。で、シュトロハイムはこの映画では5時間超、『グリード』では9時間超で一度完成させている。つまり、シュトロハイムの映画は他に比べて断然ゆっくりと進むことになる。実際、彼の作劇には省略があまり見られずシーンはねちっこく描写され、人間の内面はおろかその場の空気までとらえんばかりの入念さを感じる。射撃場のシーンなどではエレガントなショットの構成力を見せつけておきながら、やはりドラマはスマートではなくゴツゴツとした語り口になる。それが5時間超になろうがお構いなしのシュトロハイムもすごいが、この映画を好きな人の多くは5時間超バージョンも見たい思うだろう。5時間超でも見たいというのは大衆娯楽や見世物を超越した芸術性や強度のようなものがシュトロハイムの映画にあるからだ。そしてバッサリと編集されたこの映画を見るだけでもシュトロハイムの映画はおもしろいのだ。虚実や思惑が入り乱れる人間をリアルに描き出す能力は並外れたものがある。『グリード』のほうがついていた音楽がよくて、あとラストもよかった。95点。