キートンの探偵学入門

バスター・キートン、1924。キートンならではのギャグやアクション、それを見せる演出技法と撮影技法は孤高の領域に達している。特に見せ場をスーパーロングショットでとらえることが多く、それがクールで粋な演出となっている。この映画の歴史的価値を特別なものにしているのがスクリーンへの出入りだ。これもひとつのアイデアからいくつもの発展形を見せる。まずスクリーンに入ると追い出されて客席に転げ落ちる。今度はスクリーンに入ってもショットの変化にキートンは置いていかれる。そしてカメラが上映されている映画のカメラと同化するとき、キートンは初めて映画の登場人物となるのだ。映画のなかでは探偵ごっこと見事なアクションが繰り広げられる。やはりアクションの撮影が素晴らしい。しかしながら、この映画の一番すごいところは、夢から覚めたキートンと恋人の映写窓のフレームと、スクリーンのフレームの美しすぎるカットバックにある。キートンが映画を真似て行動することは、映画への愛情を端的に語っている。オマージュとして、あるいは学びとしての映画がそこにはある。この映画は映画そのものへの考察があり、二重構造もしくは三重構造によって見る者を映画内に引きずり込むことによって、映画は見る者の人生に接近する。映画を真似て映画から人生を学ぶキートンに対して、見る者が自身を投影するとき、深い感動が押し寄せてくるのだが、これらすべてをキートンは軽快なギャグでやってのけてしまうのだ。映画自体が言及される映画というのはちょっと引いてしまうのだが、この映画にはそれがまったくない。それもこれもあのラストのせいだ。100点。