ステラ・ダラス

キング・ヴィダー、1937。母子の愛の物語。この普遍的な物語をキング・ヴィダーは極めてスマートに描いている。バーバラ・スタンウィックの低音ボイスや演技はちょっと仰々しいところがあるのだが、ドロドロした感情などはかなり抑制して描かれている。映像作劇はスマートそのものだ。ハリウッド黄金期らしい撮影と照明があり、ヴィダーの演出は『群衆』で見られたものと同じく無駄がなくセンスがいい。この映画の後半の圧倒的な密度はすさまじいものがある。脚本が本当に素晴らしく、シーン終わりに悲しげなフェードアウトが連発されてゆくさまは本当に見事だった。そして決定的な瞬間を的確にとらえる演出。坂を下るスタンウィック、二段ベッドの母子、汽車での母子の別れ、そして最後に決定的すぎる見どころを持ってくる。娘の結婚式をスタンウィックは外から見る。カメラも外から撮し決して中には入らない。見る者の感情はスタンウィックに乗り移り、涙なしに見ることができない。この映画は誰ひとりとして悪人が出てこない。スタンウィックは我が道を行くタイプなのだが、その常識はずれっぷりは友人のエドとの類似によってかなり薄められている。しかしハイソサエティのなかでは露呈してしまう。私はそういう人間なのだというアイデンティティを持つがゆえに愛し合う娘とのあいだに対照が生じてしまう。そこからのスタンウィックの対応は見ていて感傷的にならざるを得なかった。母から娘、娘から母、双方向の愛情が見事に描かれているからこそ、その関係性や行動には非情に強いエネルギーが生まれていた。涙もろくはないのだが、涙なしには語れない物語だ。100点。