東への道

D・W・グリフィス、1920。この映画のリリアン・ギッシュの演技は、サイレント期における最高の演技のひとつといえるだろう。クローズアップはひとつとして同じ表情はなく常に緊張感に満ちている。ロングショットの動きは天性の才能としか思えない。どこまでが演出なのかよくわからないのだが、リリアン・ギッシュを見ているだけで幸せになれる映画だ。物語もすこぶるおもしろい。特に後半の多種多様な人間の集まる家族的な庭や食卓の空間がたまらない。このキリスト教的価値観に基づくセッティングに限らず、登場する数々のモチーフは現代でも引用可能なものばかりだ。悪い男が登場するのだが大して強くないところがいい。そして受難の似合うリリアン・ギッシュなのだが去り際に悪い男に抵抗するのもいい。昼の水辺のシーンの美しさ。夜の吹雪のシーンはリリアン・ギッシュのアクションも含めて美しい。そして氷と滝を使った『荒武者キートン』ばりの川のアクションが映画を盛り上げる。流転するリリアン・ギッシュは地上でも水上でも魅力的だった。最後はハッピーエンドで終わる。『散り行く花』の反動なのか、ハッピーエンドが本当に嬉しかった。あの死んだ赤ん坊を温めていたリリアン・ギッシュが、などと感慨に浸り、映画からあっさり消える悪い男にはざまあみろと思った。巨匠の映画ということで真面目くさって見はじめたのだが、まんまと映画の術中にはまり、リリアン・ギッシュの魅力にヤラれてしまった。この映画は時間や空間の演出が素晴らしい。また個性的な人物の描写もさらりとしておりとてもいい。サイレント映画の圧倒的な表現力を見せつけられた。100点。