恋人たち

橋口亮輔、2015。長尺の映画なのだが、長尺である理由がわからなかった。そもそもこの映画のよさがあまりわからない。3人の主人公たちはなぜほとんど接触しないのだろう。それによって映画は3つに分断されている。主人公の1人である同性愛の男のエピソードは時間も短くかなり説明的だ。いまの日本を充満する空気によって、あるいは編集で同時進行することによって、主人公たちは結びつけられているのだという見方もできなくはないのだが、その肝心の日本の空気がしっくりこないのだ。生きにくい世の中でもがきながら、それでも生きていくしかない人々。生きていくことを選んだ人々への賛歌。生きる恋人たち。そんな映画に見えてしまい、いまの日本の空気なんて説明的描写以外に見えてこないのだ。だから結局、嫁を殺された男の熱い熱い思いと熱い熱い演技と、つかみどころのない主婦のニワトリのような飛べない鳥のジャンプという、ふたつの物語が映画そのものになっている。男は風貌も目つきもいい。しかし動機づけがあるとはいえ、あの演技の熱さは見ていられなかった。同性愛の男は平凡で、男の演技は熱すぎた。では残った主婦はといえば、これが素晴らしかった。お姫様シンドロームが美しきニワトリとの戯れで立ち現れ、シャブ中毒者傍観にて終焉する。この主婦のいわゆる再生物語だけは映画的なリアリティあふれる見事なものだった。この映画にはいいロケーションがあまりなく、あったとしても反復されない。唯一、男の部屋のふすまの向こうだけは絶対的であり圧倒的だ。いいショットがたくさんあったが、そうでないのもたくさんあった。90点。