夏の娘たち ~ひめごと~

堀禎一、2017。小津とピンクとヌーヴェルヴァーグ、あとはホン・サンスとか。堀禎一のつくる映画は丹念に物語を綴りながらも映画そのものを破壊してゆくような驚きがある。そして画面に注目せよと何度もうながされる。ぎこちないズーム、人物の位置が入れ替わる180度のカットバック、まるで記念撮影のようにカメラの前に並ぶ人々、要所で見せるマジカルな演出、絶妙さと奇妙さを併せ持つ音響設計など、そこには堀禎一ならではの映画体験がある。かといって飛び道具のような部分は堀禎一の本領の一部にすぎない。この映画では普遍性と特殊性は見事に同居し融合している。小津映画のようなあらすじと細かな描写がある。しかし小津映画とは対照をなすように、父の不在による若者の自由が描かれる。それがこの映画を土地に根ざした映画であると同時にバカンス映画のようなある種の軽快さをもたらしている。父の不在は自由をもたらすのだが、その自由は性の自由へとつながり、父になることへと回帰してゆく。しかし父の不在と同様に男はこの映画では無力だ。そして3人の娘達の恋と性の戯れやひめごとが、みずみずしくもあっけらかんと語られる。この映画は人物相関図が複雑だ。しかも台詞で人物の名前が語られることが多い。名前を覚えられず誰のことを語っているのかよくわからい部分が多々あった。葬儀ではじまり結婚で終わるという極めて古典的な展開のなかには、短い映画であるのにもかかわらず映画的な驚きに満ちあふれていた。この映画が堀禎一の遺作となった。いつかはメジャーでと言われ続けたがビッグバジェットには恵まれなかった。95点。