嘆きのピエタ

キム・ギドク、2012。救済や贖罪やキリストやマリアなど、宗教的モチーフが多用され、それが仰々しく語られる非常に重い内容なのだが、手持ちカメラと鋭いカッティングによって重さが中和されている。キム・ギドクを何年も見ていないせいもあり、独特の突飛ともいえる演出や展開には新鮮な驚きがあった。まず圧倒的なのは町工場や路地をはじめとするロケーションの素晴らしさである。そこでシャッターや鎖や血や機械や階段や生き物が、とても魅力的に描かれている。その素晴らしい演出技法は、撮影技法との相乗効果によってさらに魅力的を増している。手持ちカメラによる鋭いカッティングは、よくあるカット割りすぎ感がまるでない。緻密にしてぶっきらぼうでもあり、理知的でありながらかなり大胆でもある。物語はキム・ギドクらしく、罪深き人々の救済の物語のようなものになっている。前半と後半で展開がガラリと変わるのもおなじみの形だ。いままでは前半と後半がちがう場所になることが多かったように記憶しているのだが、この映画では対照的な反復という形で男は同じ場所及び人物を巡ってゆく。後半は男にとっては母の捜索巡りである。しかしそこに暗示的されるのは、母のある思いの強化である。そしてサスペンス的に母の正体が明らかになる。終盤は説明を避け、モチーフが物を語るような形で曖昧さを維持しながら形式美的なラストを迎える。チョ・ミンスの美しさとイ・ジョンジンのとらえにくいキャラクターが映画に深みをもたらしていた。95点。