ジャコ万と鉄

深作欣二、1964。この映画は1949年の谷口千吉監督作のリメイクである。オリジナルを見ていないのだが、脚本のクレジットが黒澤明と谷口千吉となっており、脚色のクレジットもないことから、オリジナル脚本を元に撮られたと思われる。漁場を舞台に繰り広げられる西部劇みたいな物語だ。そのせいもあり、高倉健と丹波哲郎の役柄には圧倒的な自我があり見ていて新鮮だった。ふたりは対照的なのだが類似も見られる。その関係性の描かれ方が秀逸だ。馬車ですれ違う高倉健と高千穂ひづるの反復が面白い。高千穂ひづるは、特に前半において奇抜なキャラクターを素敵に演じていた。際立っていたのは漁夫たちの宿だ。そこでは宴会があり高倉健が踊り、丹波哲郎との決闘があったりする。漁夫たちのストライキも起こる。漁夫たちの存在は映像に活気を与えており素晴らしかった。丹波哲郎の寝床の位置もいい感じだ。そして、ニシン漁の時間が海の映像を決定づけている。明け方なのかわからないが、夜に漁があるから映像は暗めで松明から炎が燃え上がる。この暗めの海の映像と、馬車での雪の明るい映像の対照も有効に機能していた。キャストも素晴らしく山形勲の豪快さと空虚さや、ただひとり死にゆく江原真二郎は当然効いていたし、浦辺粂子や大坂志郎や南田洋子も、漁夫たちの男臭さを緩和する良いアクセントとなっていた。ラストでも高倉健と丹波哲郎は対照や類似を見せながら漁場を去ってゆく。高倉健もカッコいいのだが、丹波哲郎のカッコよさは素晴らしすぎた。善悪や愛憎や慈悲や無慈悲が入り乱れた役柄をクールに演じていた。95点。