岸辺の旅

黒沢清、2015。見なくても別によかったなという印象。逆に言えばなぜこの映画を見たのかよくわからない。死んだ浅野忠信と生きてる深津絵里による死者巡りの旅。生者と死者の魂の交感。旅をしながら生者と死者の親睦会のような物語。ホラーを排したホラー設定があり、スピリチュアル・ヴァイブスを匂わせながらもそっち方面には進まない。生きるとはなにか、死とはなにか、ということに縛られがちなところを、解きほぐしてゆくような良いゆるさのある映画だ。悪い人はおらずいい人ばかりが登場する。映像演出はらしいものが見られる。風景描写が素晴らしく、自然は生と死を超越、あるいは媒介する存在としてほのめかされるに十分な強度を持っていた。小松政夫の死人っぷりが見事だ。見事な演出もあり、あれを一番最初に持ってくるものだから、そのあとの死者の尻すぼみ感がハンパない。そもそもこの映画、脚本が上手く行っているのだろうかという疑問はある。特に先生として浅野忠信が授業を行うくだりは、浅野忠信が言いたいこと言っちゃいます、映画のメッセージを補完してます、というようなシーンに成り下がっている。そんなだから病院における深津絵里と蒼井優のワンオンワンと、緊張感みなぎる切り返しがこの映画のハイライトになってしまった。この映画は深津絵里の起き抜けのシーンが度々ある。しかし後半になるとなくなってしまう。終盤で一発起き抜けてもらって都市に戻してほしかった。でないと浅野忠信の引っ掻き回し映画になってしまうからだ。表現したいことは分かるのだが、胸にぐさりときたり、じんわりとこない映画だった。90点。