新婚道中記

レオ・マッケリー、1937。スクリューボール・コメディの代表作。この頃のハリウッド映画ではシーンをいかにメイクするかというのが映画の出来を左右する。その意味でこの映画は見事にメイクされたシーンが連発され、そのどれもが面白く、またシーン終わりが素晴らしい。ケイリー・グラントはこの映画の支配者だ。最後に彼の妻への疑惑が晴れる形なのだが、それでも彼は映画において神のようなポジションにいて、全体を支配している。これはケイリー・グラントのコメディ全般にいえることなのだが、彼はただひとり動揺することがないのだ。この映画でも余裕ぶちかまして痛い目にあったりするのだが、すべてが想定内であり飄々としている。それほどケイリー・グラントの軽薄さや軽妙さは抜きん出ており、映画はケイリー・グラントを軸に物語を進めてゆく。これもスクリューボール・コメディの代表作である、1940年のハワード・ホークス作品『ヒズ・ガール・フライデー』にはロザリンド・ラッセルという強烈なキャラクターがいた。しかしこの映画におけるアイリーン・ダンでは比較にならない。また『ヒズ・ガール・フライデー』でのケイリー・グラントとラルフ・ベラミーの関係性が、この映画で既に構築されていたのには驚いた。ラストシーンの照明とドアと時計が騒々しい喜劇のムードを一変させている。そしてキュートなラスト。この映画は犬と猫が要所で巧みに演出されている。犬や猫の演出にこそ演出家の力量があらわれるともいわれる。そういう意味でレオ・マッケリーの演出は素晴らしく、各パートもハリウッド全盛期らしいいい仕事をしている。95点。